第3回「総理・各党代表との対話」発言要旨

目次

3周年大会:第3回「総理・各党代表との対話」開催報告 関連資料

大会の様子(1/2) 大会の様子(2/2)

インディペンデントでサステナブルな国に
石破茂 内閣総理大臣・自由民主党総裁 冒頭スピーチ

平成の時代からの三つの変化

令和の御代も7年目になった。平成という時代は何だったのかを考えた時に、三つのものが終わったか、すごく姿を変えた時代ではなかったか。

一つ目は戦後が終わった。かつて田中角栄元総理は「あの戦争に行ったやつらが国の中心にいる間は、この国は大丈夫だ。そうでなくなった時が怖いのだ」と言った。15歳で従軍した方々が最も若い層だとしても今は90歳を超えている。ご健勝の方もいるが、多くの方がリタイアしている。

二つ目は、民主主義が姿を変えた。立候補する人が減り投票率が下がった。言論空間については、新聞の購読部数はずいぶんと落ちた。地上波を見る人はずいぶんと減った。いろいろなメディアが登場し、SNSが盛んに行われている。言論空間も変質を遂げ、民主主義が姿を変えた。

三つ目として資本主義はどうか。昨年の出生数は70万人を切った。金利は長いこと、ものすごく低いか、ゼロだった。確かに株価は上がった。企業の利益も上がった。だけど、給与は動いてこなかった。これがあるべき資本主義の姿だったのか。労使ともに努力していただいて、給料は上がってきたが、賃金上昇を上回る物価上昇が続いている。これにどう対応するべきなのか。戦後が終わり、民主主義が姿を変え、そして「資本主義とは何か」と問われているのが今の時代だ。

G7の協調と日本の役割

昨年の衆議院選挙で我が党は議席を十分に獲得することができず、少数与党になった。多くの方々のご努力をいただき、予算は年度内に成立させていただいた。法案の成立率は98%で、これまで以上に厳しい議論、白熱した議論が交わされた。これは大きな成果と考えており、御礼を申し上げる。

カナダ・カナナスキスで開催されたG7にアジアから参加したのは日本だけだ。私が強調したのは、ウクライナで起こっていること、中東で起こっていること、そして、アジアで起こっていることは全て共通し、関連しているということだ。このような現状にどのように立ち向かうべきか。いろいろな国益があり、価値観がある。それでも、G7が協調していくことが重要だと強調した。

今は中東にしても、ウクライナにしても、戦のシーズが顕在化した中であり、G7の結束は極めて重要だ。アジア唯一の参加国である日本の役割や責任の果たし方が極めて重要であるということを、言葉ではなく実行で示さなければならない。

日米安保体制の実効性高める

私は、この国をインディペンデントでサステナブルな国にしたい。日米安全保障体制は極めて重要であるが、その実効性をさらに高めることを考えていかなければ、インディペンデントな国として、持続することは極めて難しい。

また、人口にしても、エネルギーにしても、食糧にしても、社会保障にしても、財政にしても、この国は本当にサステナブルなのか。今さえよければいい、次の選挙さえよければいいという話にはならない。

国会議員になって今年で40年目になる。国会議員になる前に、渡辺美智雄元副総理の講演を聞いた。「政治家の仕事はたった一つで、勇気と真心を持って真実を語ることだ。それができない者は政治家を辞めろ」と諭された。今でも忘れることはできない言葉だ。国民の皆様に勇気と真心を持って真実を語る政党でありたいと思っている。

投資促進と労働分配率向上

1994年、日本のGDPは世界の18%を占めていた。今は4%だ。これをどのように上げていくのか。GDPが全てではないが、付加価値の総和である以上、高めていく努力はしていかなければいけない。

何をすべきか。農林水産業であり、医療であり、介護であり、防災であり、そういう分野にまだ伸びる余地がある。投資も促進していかなければならない。「給料は上がらないけど我慢してね」という話にはならない。労働分配率をどうするかということに正面から立ち向かっていかなければならない。企業は何のためにあるかを突き詰めていかなければならない。

世界有数の災害大国である以上、防災体制も世界一でなければならないと思っている。今は十分だとは思っていない。事前防災に力を入れる。

そして、看護、医療、介護の現場はどうか。そういう仕事に従事されている人々が、この仕事をして良かったと思える社会保障体制を確立したい。

物価高対策は即効性が必要

当面の物価高にも対応していかなければならない。中曽根内閣の時代から竹下内閣の時代にかけて、消費税が導入された当時、竹下内閣の支持率は4%だったが、「誰も話を聞いてくれないのであれば、自分が街頭に立って訴える」とおっしゃった竹下総理の姿を今も忘れられない。医療、介護、年金、そのような財源は、きちんと確保していかなければならない。

当面の物価高に対応するために必要なのは即効性であり、スピーディーであることだ。また、本当に困っている方々、あるいはお子さんを育てている方々に、きちんと行き渡るようにしたい。

エネルギーについても、一生懸命努力をして、ガソリンの価格も下がってきた。備蓄米の放出、随意契約の採用など、そういう形でコメの価格も下がってきた。

真心と勇気を持って真実を語る

今日本が抱えている問題は何か、そのためにどうあらねばならないのか。「今さえよければいい、自分たちさえよければいい」とは思っていない。国民は政治を信じていないかもしれない。では、政治家は本当に国民を信じているのだろうか。国民を信じない政治が、国民から信じてもらおうと思ってはならない。国民の皆様を信じながら、一つひとつの課題に勇気と真心を持って真実を語る。

そして、北海道から九州・沖縄まで、1718市町村ある。やりっぱなしの行政、頼りっぱなしの民間、無関心の市民であっては、地方創生ができるとは思っていない。国民の皆様の心を揺さぶるような政治を目指して、全力で立ち向かってまいりたい。

地方創生の解が持続性高める
―石破茂内閣総理大臣・自由民主党総裁との対話

令和臨調共同代表の小林喜光氏、増田寛也氏、佐々木毅氏らの質問と総理の回答は次の通り。

【小林喜光共同代表】
30年、50年後を見据えた総理の国家ビジョンと哲学をお聞きしたい。

石破氏
インディペンデントでサステナブルな国を目指したい。独立国家にふさわしい体制を整えていく。安全保障体制を含めて、食糧やエネルギーなど、日本国としてやっていけるのか、突き詰めていきたい。哲学という高尚なものではないが、政治が真心を持って真実を語れば、わかってくださる国民だと思っている。

【小林喜光共同代表】
30年、50年後を見据えた技術革新、日本の経済成長の源泉についてお聞きしたい。

石破氏
明治維新以来、我が国は強い国家を目指し、主導したのは政府だ。次に目指したのは豊かな日本であり、主に経済界が主導した。今我々は何を目指すべきなのか。政府でもない、経済界でもない、一人ひとりが楽しさというものや生きている意味、価値を見出していくことだ。初代地方創生大臣を務めたころは、今ほどデジタルは発達していなかった。地方の持っている可能性を引き出し、賑わいを創出した。その地域をどうやったらよくすることができるか、大切なのはワクワクドキドキである。地方であり、農林水産業であり、中小企業であり、女性であり、そういう方々がもっと発言して社会を変えていくことこそ必要だ。地方創生の解を導き出すことで、サステナビリティが実現できると考えている。

【増田寛也共同代表】
石破総理に対しては地方創生への期待が大きいと思う。この10年の経験をもとに、新しい地方創生2.0をどのようにしていくのかお聞きしたい。

石破氏
昭和30年代、40年代、鳥取市で過ごした。毎日が楽しかった。今何であれがなくなったのか。出生率が高いのは九州、沖縄、山陰で、一番低いのは東京だ。そこに若者が集まっていく。会社は経営者と株主のためだけにあるのではない。従業員、家族、地域のためにある。労働分配率を上げることが大切で、所得を上げていかなければ出生率の低減は止まらない。地方創生1.0の反省を踏まえて、所得を上げて若者と女性に選ばれる地方をつくること、DX、GXをフルに活用することによって、日本ならではの地方をつくり、東京のリスクを地方が補って減らしていく。そういう関係をつくっていく国民運動が必要だ。

【佐々木毅共同代表】
日本の民主主義に関する海外の評価や、海外のリーダーたちの見通しについて、また、日本はどういう努力をすべきなのか、総理自身の経験に基づいた考えをお聞きしたい。

石破氏
清水幾太郎氏の政治論集の中で「この国に国民主権はあるのだろうか」という刺激的な言葉があった。国民主権とは、主権者たる国民が為政者の立場に立ったらどうするのかを考えて政治行動を起こすことである。民主主義は一種、自己破壊的な性向を持っている。民主主義を守っていくには、政治が、主権者たる国民にどれだけ語ることができるかだ。主権者の意識をきちんと確立する、それに向けて政治が逃げないことが重要だ。
各国との連携は、どの国の首脳が来られるときも、その国の歴史や変遷について読むようにしている。「日本は自分の国を理解したうえで外交をやっている」と実感してもらうことは、総理大臣の責務だ。

【谷口将紀主査総括】
参議院選挙後の政権のあり方についてお聞きしたい。

石破氏
自公で安定的な議席を獲得できるよう参議院選挙に全力を尽くす。それ以外は考えていない。衆議院における少数は何ら変わらないが、内閣は連帯して国会に対して責任を負うので、一つのテーマや二つのテーマだけで連立政権ということは、憲法の下ではありえない。外交、安全保障、財政などについて、一定の一致を見たうえで連立は組まれるべきで、連立ありきではない。

日本が先頭に立って自由貿易の旗手を
野田佳彦 立憲民主党代表

衆議院は多数野党で政策を実現

昨年10月の総選挙で、立憲民主党は50議席を増やすことができた。改選前に比べて5割増になった。他の野党の躍進もあり、衆議院では少数与党政権に追い込むことができた。

具体的に様々な成果が出ている。例えば、能登の復旧・復興については7回にわたって予備費で小刻みに対応していたが、しっかりと補正予算に位置付けるようにということで、予備費1000億円を上乗せする形で修正を実現した。政府提出の予算が修正されたのは28年ぶりの出来事だ。

今年の通常国会においても、前半は高額療養費の問題が大きなテーマになった。衆参で論陣を張った。下手をすると、患者負担が7割増になるかもしれないという状況を白紙撤回まで追い込み、200億円の予算修正を実現した。

年金制度についても、基礎年金の底上げの修正など、予算の修正だけではなく、法案の修正も、衆議院において多数を持つことによって、実現可能になった。

ただ、ガソリン税の暫定税率の廃止については参議院では採決に至らず、廃案になった。参議院でも多くの仲間が当選をし、参議院でも少数与党に追い込めるように、頑張っていきたい。

物価高対策が喫緊の課題

その柱になるのが物価高対策だと考えている。「物価高からあなたを守り抜く」というのが、今回の参議院選挙のキャッチフレーズだ。

物価高の要因はいろいろあるが、品目別にみると、食料品の値上げが続いている。4月だけでも4000品目、6月で2000品目、年間を通じると2万品目になるかもしれない。エンゲル係数は28.3と43年ぶりの高い水準であり、先進国では一番高い。

依然として、消費者物価指数は高めで推移しており、4月で前年同月比3.6%上昇、5月で前年同月比3.7%上昇であり、G7の中でこの数字が最も高い国が日本であった。この現状を鑑みて、最も効果的な物価高対策は何なのかを考えた時に、食料品について現在8%の消費税を0%にするという政治判断をした。

私は、もともと社会保障と税の一体改革の当事者であり、最終責任者であり、社会保障に穴をあけてはいけないという気持ちは誰よりも強く持っているつもりだ。しかし、民のかまどから煙が上がらなくなっている状況の時、一つの選択肢として食料品の税率ゼロは有効であると考えている。

あくまで、狙いは給付付き税額控除だ。逆進性対策として一番効果があるのは給付付き税額控除だが、そこに至るまでの過程の臨時的措置として、食料品に関して消費税0%を打ち出すこととなった。ただし、原則1年間、最大で2年間だ。そして財源は提示する。責任ある減税ということで、赤字国債に頼らないことを死守していきたい。

加えて、暫定税率の問題も、臨時国会において期日を変えて、さらに修正をして、51年ぶりの暫定税率廃止に向けても努力していきたい。あくまで物価高を中心に訴えていきたい。

与野党一致点を見出す政治を

政権までの道筋については、去年の衆議院選挙が、三段跳びで言うとホップであった。そして今回の参議院選挙がステップであり、この参議院選挙で躍進することによって、次に、政権交代に向けて大きくジャンプする。三段跳びの構えで準備している。

ステップが大事であり、ステップでこけたら、ジャンプまでいけない。今回の選挙では万全を期して、改選議席数の与党の過半数割れを最小限の目標としながらも、全体の過半数割れまで追い込めるように、野党議席の最大化を目指してまいりたい。

その結果によって、どういう政権になっているかで衆議院選挙の準備に入る。よく、何かのテーマで大連立と言われるが、ワンポイントのイシューで大連立はあり得ないと思っている。

基本は、自分たちで単独政権を目指す。次に自分たちの考えに近い政党と協議をする。例えば、国民民主党とは根っこが同じだ。そういう一番近いところとよく話し合い、連立できるかを協議する。

自民党とはどうかというと、私はそう簡単ではないと思っている。私の政治人生で達成感のあった瞬間というのは、与党と野党が一致した瞬間である。1993年の政治改革や、社会保障と税の一体改革は与党と野党が一致した。最近では、皇室典範特例法の際、国益を考えた時に、互いに足を引っ張り合わないで、与野党が一致点を見出した。安易に岸の反対側にいる人と連立を組むのではなく、どうやって一致点を見出すかという政治を心がけていきたい。

いずれにしても、参議院選挙においてどういう結果になるかによって、どことどういう協議をするかは変わってくる。

法の支配に則った外交政策を

世界情勢を見た時、今、大きな過渡期を迎えていると思っている。日本の役割はいかに法の支配に徹した主張を言い続けることができるかだ。あるいは、これまでの国際協調の枠組みをどうやって維持していくかについて、むしろ日本が先頭に立って言わなければならない。トランプ米大統領の関税政策に振り回されすぎていて、その原則を世界中が見失っているのではないかと思う。

例えば、自由貿易の旗手を日本が先頭に立ってやればいい。関税交渉は二国間だけでやっているが、包囲網を作っていくことが大事である。包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)のリーダー国は間違いなく日本であり、それに対して、今、欧州連合(EU)のフォンデアライエン委員長が連携を呼び掛けているが、そういうことを日本がもっと主導して言うべきではないか。

石破総理はなぜNATO(首脳会議)に行かなかったのか。こういうことも含めて、欧州のリーダーともっとひざを突き合わせて議論をして、原理原則をトランプ大統領にも主張していくべきだ。

中東情勢についても、日本独自のネットワークが、イランともイスラエルともパレスチナともある。もちろん、アメリカとも強い絆がある。

その持ち味を生かしていくときに、国際法に則った法の支配の観点から、イスラエルの先制攻撃は良かったのかどうか。アメリカによる核施設の攻撃が、法の支配という観点から、正しいのかどうか。ストレートにはアメリカに言えない関係かもしれないが、国際社会の中では論陣を張って、仲間とともに主張していく努力をすべきではないかと思う。

中長期の財政計画が必要

国としては、財政健全化という計画は、常に持っていなければいけない。2025年度中に国と地方のプライマリーバランスの黒字化を掲げ続けてきた。まだチャンスはある。これを実現する。その後も、中長期の財政計画は作っていくべきだと思っている。

慢性的に財政赤字を垂れ流す国というのは、船底に穴があいているのと同じだ。例えば、南米に行きたい、北米に行きたい、アフリカに行きたい、など船の航路としてはいろいろあるが、船底に穴があいていたら日本の船は進まない。そこには強烈な危機感を持っていなければならない。

中長期の財政計画と、中期財政フレームのようなものを作って、毎年の予算編成をローリングしながら考えていくなどの工夫が必要になる。

社会保険料下げに正面から取り組む
吉村洋文 日本維新の会代表

社会保険料を下げる改革を

参議院選挙に向けた方向性について、大きくは二つだ。一つは、選挙前の2万円の現金給付や借金による減税は、いずれも「ばらまき合戦」であり、われわれは「ばらまき合戦」には与しない。

日本再生のセンターピンは、社会保障にある。社会保険料を下げる改革を目指していく。「現金をいかにばらまくか」、「借金をして減税すればよい」というのは結局、若い世代や子どもたち・孫たちの世代に負担を強いる。

これから本質的に考えなければいけない日本の問題点は、少子高齢化であり、人口減少だ。生産年齢人口はこれからどんどん減っていく。若い世代が増える人口構造になっていない中で、いかにして持続可能な社会保障制度をつくっていくのかが問われている。

社会保険料の負担が右肩上がりで増えている。これにストップをかけないといけない。現役世代も厳しい状況で、〝ステルス増税″と呼ばれるように、見えない負担増もあるなど、知らない間に天引きされている金額が圧倒的に大きい。

例えば、年収350万円の人は、所得税は7万円だが、社会保険料で引かれている金額は50万円だ。同じ金額を事業主も負担している。つまり、350万円の給与の人は100万円の社会保険料を負担している。きわめて大きな負担だ。

医療費など、これから先も増えていく。僕が子どものころは、医療費は10兆円程度だったが、今は47兆円だ。2040年には80兆円になる。確実に負担が増えていく。ここに何も手を付けずに、じっと見ているだけの政権与党はだらしないと思う。賛否両論あるが、この社会保険料を下げる改革に正面から向き合っていく。

副首都を起爆剤に成長国家へ

もう一つは、都市戦略だ。日本の国家構造は中央集権で、全てを中央で決めていこうという発想だ。成長戦略に都市戦略がない。全て首都圏に頼る方向は間違っている。日本の成長戦略を考える時、副首都と呼べるような経済圏をつくっていく。副首都を起爆剤として、経済成長を図っていく。

日本はこの30年間、経済成長していない。一極集中を国家戦略としている国は少数だ。日本においても、第二の経済圏である「副首都圏」と言われる地域をしっかりと構築し、そこで規制緩和であったり、規制改革であったり、様々なことにチャレンジできる社会をつくるべきだ。

カリフォルニア州は一つの州で日本のGDPを超えた。日本だけが取り残されている。まずは、東西2極のダブルエンジンとして副首都、経済圏域をつくっていく。多極成長型の国家を目指していきたい。

政策実現のために協議

参議院選挙後も、連立に入るつもりはない。政党というのは政策を実現する、公約を実現するためにある。一つでも二つでも実現することで、社会を変えていくことが重要だと思っている。

昨年の衆議院選挙の後も、賛否両論があってもこの方向で進めてきた。公約として掲げていた高校授業料の無償化を実現することができた。社会保障の改革は、まだ入り口に入ったところだが、三党の協議の枠組みができている。政策を一つでも二つでも実現する。そして公約の実現を図る。そういうことを是々非々で進めていきたい。

日本維新の会は、次世代のための政党でありたい。人口減少の社会だからこそ、子どもたち孫たちが大人になった時、「この政党があってよかった」と思ってもらえるような行動・ふるまいをしていきたい。

「減税も」「給付も」で物価高を克服
斉藤鉄夫 公明党代表

生活者の視点で責任を持つ

「鷹の目」と「蟻の目」という言葉がある。大局観と現場感覚の両方が大事であるということを意味する。

空間的に見ると今、世界は安全保障、世界経済の見通しが立たないという大きな不安の中にある。そして、その影響で、現場では資源高、資材高、物価高で一人ひとりが悩んでいる。

時間的に見ると、少子高齢化、人口減少という日本が抱える構造的課題があり、社会保障、年金・医療・子育てに対する不安に直面している。

そういう中にあって、公明党は生活者の視点を大切にしながら、日本の方向性に責任を持つ姿勢を貫いてきたつもりだ。与党の一員として、言うべきことは言い、政府に決断を迫るときはきちんと迫っていくことを貫いてきた。

物価高対策と社会保障構築

今回の参議院選挙に向けて、「鷹の目」「蟻の目」を貫く視点として、物価高を乗り越える経済、社会保障の構築をテーマに掲げた。大きな柱が三つある。

一つ目は物価高の克服だ。この物価高に対して、毎日の生活の苦しさを訴える声が寄せられている。「減税か」「給付か」ではなく、「減税も」「給付も」で、両方を駆使して乗り越えていかなければならない。

二つ目は所得向上と社会保障の充実だ。所得向上には四つあり、中小企業を中心にした物価高を上回る賃上げ、エッセンシャルワーカーの給料を上げていくこと、そして、奨学金減税については、返済額の一部を所得控除するなどの減税を提案した。最後は、もう少し働ける改革だ。時間管理と健康管理を大前提にしたうえで、もう少し働きたいという人の声も多く聞いた。しっかり進めていかなければならない。

三つ目の柱に、財源を生み出す国づくりを掲げた。「日本版政府系ファンド」を設けて、財源を生み出していく。

自公で参院選勝利を

今、自公以外の連立政権のパートナーを考えている段階ではない。自公でこの参議院選挙を勝ち抜くことしか考えていない。

もちろん、自公が参議院で勝ったとしても、衆議院の少数与党体制は変わらない。この通常国会は、公明党はしっかり野党との合意形成に努めてきた。

酸素原子と酸素原子が二つになって酸素分子になって酸素の性質を発揮する。原子同士を結び付けている分子間引力は自由電子と言い、一つの電子が両方を回ることで結合力になっている。まさに、公明党は、自由電子の働きを通常国会で行った。

地方に魅力ある産業を

人口減少の原因は社会で子育てをする観点がなくなってきていることにある。私は島根県の山奥に生まれ、集落の人に育てられたという思いがある。そういう社会では安心して子どもを産める。そういう社会を取り戻していかなければならない。

現実に少子化が進む地方をどのように立て直すか。国土交通大臣の経験から、地方に魅力ある産業を興していくしかないと思っている。魅力ある雇用先をつくることでしか、若い人には地方に残ってもらえない。

その一つは、インフラに関わる建設業だ。建設業が地域の社会インフラを整備していく役割を、防災・減災・国土強靭化の観点からやっていく。農林水産業の振興で、農業の仕事としての魅力を高める。森林はこれから大きく見直されてくる。森林政策は日本の再生を大きく左右する。

観光業については、欧米はGDPの約10%だが、日本はまだ5%程度で、伸びしろがある。日本の魅力を世界に訴えていく。産業を呼び込み、所得を上げ、日本の地方を活性化させることをしっかりやっていきたい。

短期と中長期で「手取り増やす」政策
玉木雄一郎 国民民主党代表

給料が上がり、手取りを増やす

この参議院選挙は、私たちは「手取りを増やす夏」で臨みたい。2020年9月の結党以来、三つの大きな政策の柱を掲げてきた。「給料が上がる経済の実現」「自分の国は自分で守る」「人づくりこそ国づくり」で、変わらぬ私たちの実現すべき政策理念だ。

これらは、西郷隆盛の「文を興し、武を振ひ、農を励ます」という、政(まつりごと)の三つの大きな方向性に合致していると思う。国家が何をすべきなのか、政治が何をすべきなのか、そのことを基本において、国民民主党を結党した。この理念をしっかり進める政策を推進していきたい。

今の日本の最大の課題として考えているのは、「30年給料が上がらない国になってしまった」ことだ。これを何とか変えたい。短期的にやることと長期的にやることを組み合わせて、構造的・本質的な課題に向き合っていく。

短期的に見ると、民間労使の努力によって、賃上げが30年ぶりの高水準になっている。一方で、税負担、社会保険料負担、ガソリン代・電気代の高止まりによって、手取りが増えない。それによって持続的な賃上げが妨げられている。

税負担を抑えていくこと、社会保険料負担を抑えていくこと、ガソリンの暫定税率の廃止を含むエネルギー政策の抜本的な見直しが重要だ。安全基準を満たした原発の再稼働のみならず、新増設も含めて、我が国のエネルギー自給率を高めることによって、安価で安定的な電力供給を確保していく。

これらを組み合わせて、手取りを増やす。頑張って働いた労働者の手元にしっかりお金が残る経済を実現したい。昨年の衆議院選挙以来申し上げてきた「103万円の壁の引き上げ」は、控除額を引き上げて、手元に残るお金を増やそうという政策だ。一部は実現したが、富士山で言うとまだ二合目だ。今後もさらに引き上げていきたい。

物価高騰と賃金上昇の最大の勝ち組は国だ。6年連続過去最高の税収で、5年連続で税収の上振れ、しかも、年間の上振れ額の平均は6兆円を超えているし、使わなかった予算も4年連続出ていて、その平均額も6兆円である。歳出・歳入両面のもう一段の見直しを行うことによって、国民に還元できる。特に所得税の還元額を増やせる。

経済成長で財政再建促す

社会保険料の引き下げについては、後期高齢者医療制度の窓口負担は原則1割となっている。これを原則2割にして、現役並みの所得・資産のある人には3割負担をお願いしたい。年齢ではなく、能力に応じた負担をお願いすることで、現役世代の社会保険料負担を抑える。

中長期的には10年程度で名目GDP1000兆円を目指したい。日本の場合は、税収は名目GDPの12%程度だから、達成した時には120兆円の税収と、累積債務の対GDP比率は150%になる。今は249%なので、格段に改善する。経済成長を促すことで、財政を再建させていきたい。

あわせて、IFI(独立財政機関)をつくって、進捗を管理する体制を作りたい。国民民主党は現役世代をしっかり支えて、国家の経済活力を取り戻す政策を進めていく。

政策本位で他党と連携

参議院選挙の結果によってどういう組み合わせになるか分からない。政策本位で日本国民にとっていい政策であれば与野党関係なく協力していきたいし、ダメなものはダメと言う。「誰と組むかより、何を成し遂げるか」を基準に政策判断・政治判断をしていきたい。

防衛予算拡充よりも物価高対策を
田村智子・日本共産党委員長

物価高対策と対米外交が争点

今度の参議院選挙を、「与党を少数に追い込む選挙」と位置付けて、全力で日本共産党の躍進のために奮闘したい。

その理由は大きく二つある。一つは、与党は物価高騰対策にあまりにも無為無策だということだ。国民が求めているのが消費税減税だが、与党はこの消費税減税は一貫して拒否し、4月に一度持ち出して、あまりに不評で取り下げた現金給付をまた持ち出す。今の物価高騰への対策がないという行き詰まりが、極めて深刻になっている。

もう一つは、トランプ政権のもとで、日米関係がこのままでいいのかが問われている。ところが、トランプ大統領の顔色をうかがう外交姿勢ばかりが取られている。自民党政治と正面から対決してきた政党として、この二つを大きな争点として戦っていきたい。

物価高騰対策だが、私たちは消費税廃止を目指して、まずは緊急に5%への減税を実現し、インボイスを廃止する。暮らしが追い詰められている状況を見ても、あらゆる商品・サービス消費に関わって、消費のたびに減税になるなど、消費税減税が最も効果的な物価高騰対策であることは間違いない。

財源は、大企業、富裕層に対し、利益に応じた負担をしてもらうという応能負担の原則に立った税制改革によってねん出する。消費税5%への減税には、15兆円が必要になるが、これを充てることができる。

特に問題視しているのは、アベノミクスの下での減税だ。消費税の増税のたびに、法人税の税率が引き下げられた。2023年度では11兆円の減税になっているが、この減税が、設備投資にも、賃上げにも回らない。それならば、ここにメスを入れて、消費税の減税に踏み出すのが当たり前の政治ではないか。

防衛予算拡充を見直す

もう一つが、このままアメリカのいいなりでいいのかということだ。トランプ関税の問題もあるが、トランプ政権が日本政府に要求しているGDP比3.5%の防衛予算もある。この要求にどうするのかが問われている。GDP比3.5%といえば、20兆円以上になる。この道をこのまま突き進めば、暮らしの予算も、平和も、脅かされることは明らかだ。そもそも、この大軍拡は、米中対立のもとで、中国に対抗するミサイル網を日本列島に組み込むために行われている。

果たして、米中の覇権争いに日本が巻き込まれてしまうことが、日本の経済にとって、安全保障にとってどうなのか。このことを今、真剣に考えなければならない。そういうことを訴えて、参議院選挙を戦ってまいりたい。

市民と野党の共闘で政権交代

私たちが「自公を少数に追い込む選挙に」と掲げているのは、市民と野党の共闘で、政権交代に繋げていく選挙にしていくことが求められているという決意からだ。

先日、立憲民主党の野田代表と参議院選挙で選挙協力を行うことで合意し、市民と野党の共闘で新しい政治をつくるという新たな発展に重要な一歩を築いた。

参議院選挙で、衆議院に続いて与党を少数に追い込むことになれば、国民の皆さんの要求に応えて、新たな政策実現がいくつもの分野で進んでいくことになる。

消費税減税、選択的夫婦別姓など、国民からの要求の一致点での積み重ねが重要だ。参議院で少数与党に追い込んだ時に、来たるべき総選挙で、自民党政治に代わる政権を作ることができるのかどうかという新しいステージが見えてくる。