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提言「持続的な社会の発展のための財政規律」に関する記者会見開催報告
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令和国民会議(令和臨調)は6月10日、都内で記者会見を開き、持続的な社会の発展に向けた財政運営に関する提言を公表しました。将来世代への負担の先送りを回避し、有事に対応できる財政余力を確保するのが狙いです。日本経済が長く続いたデフレ状態を脱し、新たな局面を迎えている今こそ、デフレ下、ゼロ金利下における財政の「常識」を見直し、規律ある財政運営の確立に取り組むことを求めています。
有事対応できる財政余力を
記者会見には、令和臨調「財政・社会保障」部会共同座長の平野信行氏(三菱UFJ銀行特別顧問)、中空麻奈氏(BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長)、同部会主査の小林慶一郎氏(慶應義塾大学教授)、伊藤由希子氏(慶應義塾大学教授)が出席しました。
平野氏は、提言をまとめる際の問題意識について、「財政は、持続的な発展を遂げ、国民が将来への希望を持って安心して暮らすための公共的基盤だ。しかし、GDPの240%に近い公的債務を抱え次世代に先送りしている現状では、将来世代における政策の選択肢が狭まり、地政学リスクや大規模な自然災害といった有事の際の対応にも支障を来す」と指摘しました。
そのうえで、「日本の経済が長く続いたデフレ状態を脱し、新たな局面を迎えている今こそ、規律ある財政運営の確立に取り組むべきだ」と述べました。
「持続的な社会の発展のための財政規律~将来世代にツケを回さず、有事にも備える~」と名付けられた提言のポイントは、「2026年度以降の長期の『財政健全化目標』の設定」「中期の財政フレームワークの導入」「毎年度の予算編成時の歳出ルールの設定」の3点です。
財政健全化目標の設定については、現在の「債務残高対GDP比率(債務残高比率)の安定的な引き下げ」と「基礎的財政収支(PB)の黒字化」に代えて、債務残高比率の具体的な引き下げ幅と時間軸を示すことを求めています。そして、目標を達成するために、PBの一定水準の基調的な黒字化を目指します。
中期財政フレームワークの導入によって、複数年度にわたる戦略的な予算配分・施策の優先順位を明確化するとともに、補正予算や基金の膨張による予算の枠組みの形骸化に対処します。具体的には、戦略的な政策目標に基づく、3年間程度の「中期財政フレーム」を作成し、分野ごとに歳出総額(当初予算・補正予算の合計)を設定します。
「毎年度の予算編成時の歳出ルールの設定」については、2025年度以降について、歳出改革方針を具体的に示すとともに、支出や減税を行う際には財源も確保する(ペイ・アズ・ユー・ゴー原則)ことと、中期財政フレームを遵守できない場合は、原則、翌年度に是正措置を実施すること、としました。
提言の結びでは、国民一人ひとりの幸せ(well-being)を持続的に向上させていくためには、単に財政支出の規模を拡大するのではなく、民間の活力を引き出し、より社会に付加価値を生み出すような支出に重点化すること、そして政策の評価を徹底し、限られた財政資源を最適な形で配分するとともに、不測の事態に備えるために財政余力を確保することが重要であると指摘しています。
平野氏は「非効率な歳出を抑制するとともに、世代間の受益と負担の格差を拡大させないためにも規律ある財政運営を行う必要がある。そのうえで、公的債務残高比率をうまくコントロールすることによって、いつ来るかわからない有事においても必要な歳出を賄うための国債発行を円滑に行えるよう、財政余力とともに国の信用力を高めていく。つまり、主要国に対して著しく劣位にある我が国の格付けの引き上げを目指すべきだ」と述べました。
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