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「政治資金制度改革等に関する緊急提言」記者会見開催報告

令和国民会議(令和臨調)は、政治資金制度改革等に関する緊急提言をまとめ、2月2日、記者会見を開いて公表しました。緊急提言は「政治資金制度の緊急改革」と「政党ガバナンスの改革」という2本の柱からなり、「政治資金・政党助成金等を監督する独立性の高い第三者機関の設置」については、与野党が議論するたたき台として「政治資金委員会」(仮称)構想をまとめました。同提言は政党改革を起点とした政治改革に関する提言の第一弾であり、今後、この提言を軸として、令和臨調と連携する「日本社会と民主主義の持続可能性を考える超党派会議」で与野党国会議員有志と議論を進めていきます。また、与野党の議論を踏まえながら、政党改革を軸に、令和の政治改革・統治機構改革の主要課題について問題提起を開始します。

政治資金制度改革等に関する
緊急提言
「政治資金委員会」(仮称)構想 記者会見の様子

緊急提言は1月26日から「政治改革国会」が始まり、与野党で政治資金制度改革をはじめとする本格的な政治改革論争が行われようとしている状況を踏まえ、「民主政治を支える国民の健全なインフラとしての政党・政治資金制度の確立を」と呼びかけたものです。

記者会見には、令和臨調共同代表の佐々木毅 元東京大学総長ならびに、運営幹事の新浪剛史 「統治構造」部会共同座長、秋池玲子 同部会共同座長と、曽根泰教 慶應義塾大学名誉教授、主査総括で「統治構造」部会主査を務める谷口将紀 東京大学教授、同部会主査の宍戸常寿 東京大学教授が出席しました。

冒頭の挨拶で新浪運営幹事は、「昭和、平成で積み残した政治改革をやるべきタイミングが来た。世界情勢が大変な中で、日本で政治が停滞するのはよくないが、それでも、今は本当の改革をしなければならない。この機を逃してはいけない」と決意を示しました。

虚偽記載で政治家の責任問う

続いて、谷口主査総括が緊急提言の内容を説明。「派閥主導の政治資金パーティーを巡る疑惑は、かつてのリクルート事件と比べられるが、有力派閥が組織ぐるみで裏金を作っていた点や、その裏金がどのように使われているかを考えると、リクルート事件よりも問題の根は深い。病根は政党のガバナンスそのものにあり、今回の疑惑はその症状の一つに過ぎない」と指摘しました。

「政治資金制度の緊急改革」では、「事の本質は法律違反を犯した一部の関係者の処罰、あるいは政治資金パーティーに対する弥縫的規制にとどまらず、不透明な資金の授受を可能にしているシステム全体の包括的かつ抜本的な改革に求められる」と述べ、今通常国会において合意すべき事項と、今通常国会中に与野党で道筋をつけるべき事項、中長期の合意形成課題の3点の改革案を提示しました。

今通常国会において直ちに合意すべき事項としては、「パーティー券購入者の公開基準を5万円に」「パーティー券の売買を含む現金による政治資金の拠出・収受の禁止」「収支報告書誤記載・虚偽記載に対する罰則強化」の3点を挙げました。

なかでも、罰則強化については、「少なくとも政党の本部・都道府県支部や派閥のように多額の政治資金を扱う政治団体においては、政治団体の会計責任者らが政治資金収支報告書に一定額を超える虚偽記載を行った場合は、公職選挙法の連座制と同様に政治家の責任を問う仕組みが必要ではないか」との言及がありました。

谷口主査総括は「私たちは、実現できない理想を語るより、実現に向けた道筋を描く。与野党協議のたたき台としてこの提言を世に問いたい」と述べました。

政策活動費など使途の公開を

また、今通常国会中に与野党で道筋をつけるべき事項として、「政治資金収支報告書作成・公開のデジタル化」「企業・団体献金を受け取れる政党支部の制限(政党本部・都道府県連に限定)」「政策活動費・調査研究広報滞在費の改革」「政治資金・政党助成金等を監督する独立性の高い第三者機関の設置」「政党助成制度の点検と見直し」の5点を挙げました。

政策活動費・調査研究広報滞在費については、使途基準を明確化し、領収書等の証拠書類の添付および使途の公開の義務付けを求めています。谷口主査総括は「政治資金規正法に掲げられているのは、政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることに鑑み、その収支の状況を明らかにすることだ。こういう重要な公共の利益のためには、『政治活動の自由』に対する制約は正当化されると考える」としました。

対応なければ政党法も視野に

一方、政党ガバナンスの改革については、「女性や若者をはじめとする多様で幅広い候補者のリクルートメントの方策」「党内でのリーダーシップ養成の方策と選抜のルール」など、10項目の「政党ガバナンス・コ―ド」の確立を提言。

政党こそ憲法が保障する結社の自由の最たる対象であることを考慮し、本提言段階では、あえて政党の自律性の発揮による「政党ガバナンス・コード」の強化を要請するにとどめています。谷口主査総括は「年間300億円超の政党助成金を受け取りながら、各政党のガバナンスの緩さはいかがなものか。各党が必要な対応を行わないなら、政党法制定の検討を視野に入れざるを得ない」とクギを刺しました。

その後、登壇者からコメントがありました。秋池運営幹事は「2015年にコーポレートガバナンス・コードが策定され、企業が経営において、ガバナンス体制を構築する環境は飛躍的に向上した。政治は、民間の経営と異なるが、より良い社会を目指す取り組みのためには、コーポレートガバナンスが応用されることもある。良識ある政党政治に基づく議会運営が民主政治の根幹であり、政党の役割は大きい」と述べました。

また、宍戸主査は「課題が多く、価値観も多様化し、様々な資源制約を抱える社会を適切に運営するには政治のガバナンスが重要だ。政党は民主政治のガバナンスにとって決定的に重要な存在であり、政党のガバナンスが確立されない限り、民主政治、ひいては社会のガバナンス全体は危機的な状況だ」との見解を示しました。

最後に、佐々木共同代表は「30年前に政治とカネの問題を処理したはずだったが、今回の出来事は期待とは逆の方向へと政治が動いていたことを明らかにした。残念で深刻な事態と考えている。令和臨調の共同代表声明でも指摘したが、新しい政治改革の起点として、今回の出来事を忘れるわけにはいかない。緊急提言はその一部であり、その背後にはたくさんの課題がある。今回の意見表明で活動は終わりになるのではなく、これから加速していくように努力をしていきたい」と意欲を表明しました。