「第2回 政党との対話」発言要旨
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経済回復の持続へ向けて強い決意
岸田文雄 内閣総理大臣・自由民主党総裁 冒頭スピーチ
改めてこの一年を振り返ると、ロシアによるウクライナ侵略、新型コロナウイルス感染症との闘い、世界的な物価高騰、またエネルギー危機や半導体不足、さらにはグローバルなサプライチェーンの混乱など、何十年に一度と言われるような事案が次々と起こってきた。
経済においても、また国際社会においても、歴史の転換点を迎えている。こうした中で、先送りできない課題に正面から取り組み、一つひとつ答えを出していくことが我々の歴史的な使命であるという覚悟で、様々な課題に取り組んできた。
持続可能な資本主義の新しいモデルを模索しなければならない。新しい資本主義は、人への投資と、そして気候変動等の課題を成長のエンジンにする。二兎を追うことによって、課題解決と成長を実現して持続可能性を維持していく。
30年ぶりの賃上げ、100兆円を超える国内投資、33年ぶりの株価の高騰など前向きな動きが出ている。これは間違いない。しかし、大事なのはこれを持続することができるかどうかだ。
「三位一体の労働市場改革」等を行うことによって、人への投資を構造的な賃上げにつなげ、そして、持続的な人への投資につなげていくことがポイントだ。気候変動等の課題に対する様々な投資を成長のエンジンに変えていく。今、世界で政策競争と言われるような状況が起こっている。日本では成長志向型カーボンプライシング構想によって10年間で150兆円の官民の投資を行う構想が打ち出された。
外交のキーワードは、対立や分断から協調への動きを再び取り戻すことができるかだ。国連の安全保障理事会の常任理事国が隣の国を侵略する事態が発生し、国際秩序をどう維持していくのかが大きな議論になっている。国際社会が拠って立つ根源的な理念をもう一度みんなで確認することができるか、国連を始めとする国際的な議論の場を再構築することができるかにかかっている。
5月のG7広島サミットでは、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」という理念の下に集まろうと、G7だけでなく、中間国やウクライナのトップも同じテーブルについて、この理念の下で一致し、協力をしていくという結論に至った。これは歴史的な重みがあると思う。国連改革についても、今まで消極的であったアメリカですら、安保理改革の問題に取り組もうとしている。
社会の議論において、キーワードになるのは人口減少だ。そして、この人口減少という国家的な課題に取り組むためには、次元の異なる少子化対策とデジタル社会への変革を車の両輪にして、経済社会を変革することが重要だ。
児童手当をはじめとする様々な支援策や制度を充実させ、これらを使いこなすには、社会自体の意識が変わらなければならない。このような国民運動をスタートした。併せてデジタル社会への対応、スマート農林水産業や観光DX、遠隔医療、遠隔教育、地方創生などの課題をデジタルの力で乗り越えようと、デジタル田園都市国家構想を打ち出している。
効率が良く大きな仕事ができる「小さくて大きい政府」をつくることは重要な問題意識だ。国全体にデジタルのインフラを敷き詰めて、市町村がデジタルを通じた、国民に寄り添った行政サービスを行う。それを都道府県がつないでいく。こうした行政を考えていくべきではないかと考えている。
共同代表ら外交・安全保障、経済再生、外国人との共生、政治の役割などを問う
岸田内閣総理大臣・自由民主党総裁との対話
【茂木共同代表】
外交・安全保障について、時代認識・基本認識を伺いたい。G7広島サミットは、歴史的な成功と認識しているが、これをどう活かすのか。また、アジア外交の構想についても伺いたい。
岸田氏
1989年にベルリンの壁が崩壊してポスト冷戦時代が始まり、ロシアのウクライナ侵略によってポスト冷戦時代が終わった。国際秩序の根幹が揺るがされる複合的な危機が起こり、国際社会の分断などにどのように向かっていくのかが問われている。
G7の第9セッションで、G7や中間国、ウクライナの大統領が同じテーブルに着き、世界を弱肉強食に戻さないための議論を行った。今年後半に開かれるAPEC首脳会議などの国際会議で、こうした理念を拡大していく。核兵器のない世界に向けた行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を表明した。
アジア外交については、韓国とは3月以来、4か月で4回首脳会談を行うなど、日韓関係の改善が如実に現れており、今後、民間も合わせた幅広い改善を進め、両国の国民が関係改善を実感できるように結果を出す。日中関係は前向きなモメンタムを感じたが、その後足踏みしている。しかし、隣国であり、最大の貿易相手国であるので、対話を続け、建設的・安定的な関係を維持したい。自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けて、各国と協力しつつ様々な施策を展開していく。また、日ASEAN友好協力50周年を記念して、東京で首脳会議を開く。
【小林共同代表】
日本経済は30年以上、成長せずに停滞した。ここ最近の株高などを、日本社会の一過性ではない変革につなげる具体的な手立てについて伺いたい。
岸田氏
株価だけではなく、投資や賃上げの動きなどにも前向きなもの感じており、良い兆しは出ている。先日、アメリカのグローバルファンドのCEOらと意見交換をする機会があったが、彼らは「30年間、日本をウォッチしてきたが、今が最もポジティブだ」と異口同音に話していた。これを一過性のものに終わらせるのか、こうした動きを持続させ、成長軌道に乗せられるかは、これからの我々の行動にかかっている。
「スタートアップ育成5か年計画」を策定した。スタートアップへの過去最高の1兆円の投資、7つの税制改正、オープンイノベーション推進などに取り組む。また、研究開発投資の拡大も進めるほか、半導体などの重要物資の安定供給のための環境整備へ支援を行っていく。
資産所得倍増を掲げ、「貯蓄から投資へ」のシフトを大胆かつ抜本的に進めていく。賃上げによって可処分所得を増やし、貯蓄から投資へのシフトを進める。NISA、iDeCoを拡充する。2,000兆円に上る家計資産を開放し、人への投資も持続しなければならない。
「リ・スキリングによる能力向上支援」「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」「成長分野への労働移動の円滑化」という「三位一体の労働市場改革」による構造的賃上げの実現を目指す。キャリアは会社から与えられるものでなく、自ら切り拓いていくものという意識改革を促し、男女が共に働きやすい環境を整備する。
【増田共同代表】
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来人口推計によると、2070年には総人口の1割以上を外国人が占めるという。移民と呼ぶかどうかは別にして、政府としては覚悟と政策を示し、受け入れ環境の整備に取り組むべきだ。
岸田氏
人口減少社会において、外国人と共生する社会を考える必要がある。共生の仕方は世界各国様々で、日本の現実に合ったものを考えていく。一定の専門性・技能を有する新たな外国人材の受入れと、我が国で生活する外国人との共生社会の実現に向けた環境整備について、政府一体となって総合的な検討を行うため、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」を開催し、共生社会のロードマップを取りまとめた。円滑なコミュニケーションや、外国人の情報発信、相談体制の強化、外国人が暮らしやすい地域社会などの問題意識で様々な政策が必要だ。今後の状況をしっかり見極めて、日本独自の共生社会の道を探っていきたい。
【佐々木共同代表】
歴史が転換する中で、政治の転換をどのように実現するのかは国民にとって重要だ。しかし、政党や国会の活動は不十分で、自己転換のエネルギーを生み出しているとは言い難い。活動量を増やすことは避けて通れない課題だ。その意味において、国会運営は明らかに行き詰まり、国民は不満を抱いている。
岸田氏
政治の活動量と覚悟が足りないという指摘を重く受け止める。先送りされてきた様々な課題に正面から取り組む中で、議論を行うのは重要だが、結果を出すことが求められている。そういった思いで、防衛力の抜本的強化やエネルギー政策の転換、人口減少問題などを前に進めている。外交においても、ウクライナ問題で長年のロシア政策を大転換した。
国会のあり様についても役割を果たしていないという指摘を謙虚に受け止めなければいけない。時代の変化に対応し、国会のあり方も変わっていかなければならない。国民に対して選択肢を示す議論を進めていく。政治や国会が役割を果たすために、努力をしていきたい。
中道リベラル貫き、活力を高める
泉健太 立憲民主党代表
冒頭スピーチ
国会の終盤では、「解散も」という状況もあったが、立憲民主党はいつあるかわからない戦いに備えて、常に政策も磨いている。主要な政策のテーマは「日本の活力を高めたい」ということを知ってもらいたい。
イメージを先に持たれているかもしれないが、立憲民主党は元気だ。決して、退潮傾向ではない。確かに国政選挙では議席が伸びなかったが、今、野党第一党であり、統一地方選挙では前後半合わせて議席数を伸ばした。特徴的なのは、45歳以下の議員が増えたことだ。党大会で「50人増やそう」と言っていたのが90人増えた。もう一つの特徴は女性議員が60人ほど増えたことだ。
日本の活力を上げていくために、「人」「地方」を大事にしようと考えている。多様性について、いろいろな法律が出てきた。入管法(出入国管理及び難民認定法)の問題でも、技能実習生制度は見直されつつあるが、日本においては、外国人労働者がずいぶん粗末に扱われたのではないかという問題意識がある。外国人材を丁寧に扱い、多文化共生の推進にしっかり取り組みたい。
多様性に関しては、LGBTも取り上げられた。毎回陳情に来られるのが「選択的夫婦別姓」だ。このような多様性を認めていかなければ、元気な人が元気でなくなり、この国の活力が失われる。多様性、多文化共生の価値観を大事にしている。
一人ひとりの生活の向上のために、賃上げを進め、生産性を上げていく。そして、新しい産業を伸ばしていかなければいけない。アメリカのバイデン大統領も「バイデノミクス」というボトムアップ型経済政策について大統領選挙に向けて発言している。
我々が伸ばしたい分野は、気候変動やエネルギーだ。再生可能エネルギーや省エネ技術に力を入れ、投資を増やしていきたい。住宅の高断熱化リフォームに補助金を出す政府の「先進的窓リノベ事業」は、あっという間に予算が足りなくなった。
これらの分野の予算を拡大すれば、地域の再生可能エネルギーも増えていく。そして、介護や保育の現場で働く人の待遇の改善や、食料自給率の向上なども地方の経済に資する。
また、若い世代の後押しとして、「チルドレン・ファースト」を発信し、育児休業取得時の実質所得100%など、給与が減らない形にするべきだと訴えてきたが、徐々にそれが実現しそうな状態になってきた。児童手当の所得制限についても同様で、野党でありながら、我々が訴え続けて、そして実ったものでもある。
子供の数が減少するのは、育児に関する女性の負担感が大きいからだと言われている。我が国は、男性の育児参加の時間が非常に短い。育児期間中の時短勤務における給料の見直しはできないのだろうか。育児に参加するとキャリアに影響が出たり、給料が下がったりするということは、若い世代には我慢できないことだ。そこまでして人を大事にしなければ、我が国はどんどん衰退してしまうという危機感を持たなければならない。
対話
【曽根運営幹事】
日本の活力を高めるためのマクロ経済政策について伺いたい。
泉氏
外交・安全保障政策の方向性、子ども・子育て政策のビジョンなど、重要政策の対案を出しているが、マクロ政策としては新しい金融政策を出している。物価が上昇してきたことも踏まえて、徐々に金融の正常化を図っていかなければならない。市場との対話や激変を避けることを前提に、イールドカーブコントロールを徐々に柔軟化し、最終的には撤廃していく。国債やETF(上場投資信託)の処理についても、目を背けるわけにはいかない。
「バイデノミクス」が目指すボトムアップの経済は「理想に過ぎない」と言われるが、アベノミクスもトリクルダウンは起きず、理想に過ぎなかったのではなかったか。私たちは庶民の所得をしっかりと上げていくことで、個人消費を拡大させていく。積極的に財政を利用し、環境産業への投資、地域経済に資するような介護・保育の現場の待遇の改善などに取り組む。
【曽根運営幹事】
候補者の一本化と選挙協力、政権構想を分けて使っているが違いが分かりにくい。
泉氏
立憲民主党は、今の自民党政権と対抗する唯一最大の勢力である。日本維新の会は「改革保守」を名乗っており、「保守」対「改革保守」という選択肢にするのか、それとも、「保守」対「中道リベラル」という選択なのかを次の総選挙で問うことになる。
「中道リベラル」の軸をつくり、候補者調整や一本化に応じる政党があるかどうかだ。選挙協力は一本化した後に、両方の政党・陣営が一緒になって選挙運動をする。候補者調整は候補者が一人になったということに過ぎない。予備選を実施したからと言って、負けた方が勝った方を応援するかどうかはわからない。
【増田共同代表】
国会で党首討論が2年以上開催されていない。党首討論の復活や国会の活性化・合理化にどのように取り組むのか。
泉氏
自民党との国対(国会対策委員会)間のやりとりの中で、党首討論が実現していないのが実情だ。与党がトータル時間の45分を譲らなければ、複数の野党がその時間を分け合い、討論の意味がなくなる。時間を増やすと総理の負担になるが、予算委員会はやっているので、党首討論はやっていただきたいと考えている。
【曽根運営幹事】
立憲民主党が政権を取った時のイメージを示していただきたい。
泉氏
立憲民主党はリベラルからスタートし、合流した後の2020年からは明確に、現実的な政権運営を考える中道リベラルの勢力だ。単独政権を目指すのが当然だが、この軸をぶらさずに、他の政党がそれでもやれると言うなら、その政党と協議をすることはある。その枠をはみ出るような勢力と政権を握るつもりはない。具体的に言えば、国民民主党は我々が政権を担いうる仲間である。
政権基盤の安定化で自民党と一致
山口那津男 公明党代表
冒頭スピーチ
先の国会は新型コロナウイルス感染症からの脱却、ロシアのウクライナ侵略に伴う物価高対策、そして、日本の社会経済が抱える構造的な課題にどのように布石を打つかなどに対応した。感染症対策としては政府の中の司令塔機能、日本版のCDC(疾病予防管理センター)をつくることに取り組んだ。
物価高対策は昨年から様々な補正予算の措置を取り、国の対応として、燃料油の激変緩和や電気代・ガス代の負担軽減に取り組んだほか、地域が柔軟に対応できる仕組みも整えた。また、次なる時代を見据えて、GX(グリーン・トランスフォーメーション)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めるための法制度を整備した。
最大の課題は少子化対策であり、我が党は「子育て応援トータルプラン」を公表した。部分的に積み重ねられた政策を体系的に整理し、継続性や予見可能性を高めて提案した。政府との議論の過程を経て、我が党の政策が取り込まれ、「こども未来戦略方針」という形で実現した。
優先順位の高い政策を3年間で集中的に実施する。財源についても、より具体化し、実行に移していきたい。すでに、伴走型の相談支援と経済支援を一体化して行う事業を実行に移しており、出産育児一時金も増額した。
そして、全世代型の社会保障を見据えた上で、議員立法で取り組んだのが「認知症基本法」だ。認知症の施策が本格的に取られない中で、国が基本計画を作り、自治体にも促し、具体的な施策を推進するための基本法だ。公明党が長年提案しており、ようやく合意形成ができた。
G7の議長国として、広島サミットが開かれた。外交・安全保障もこれからの大きな課題だ。核兵器のない世界を目指す中で、G7の首脳とウクライナのゼレンスキー大統領らが広島で献花したことは、新たな出発点になる。
我が国も多様性を尊重する寛容な社会というものを形成していかなければならない。LGBT理解増進法をつくり、基盤を整えて、その先の具体的な制度化につなげていくべきだ。
これからの目指すべき社会のキーワードは持続可能性だと思う。経済における持続可能性は、財政の持続可能性にも配慮しなければならない。そして、人口減少、少子高齢化が進む中で、社会・地域コミュニティの持続可能性を図っていく必要がある。大きな災害に見舞われることが度々起こる。災害に強い国土形成も重要だ。
これらを推進するためには安定した政権基盤が必要だ。この春の統一地方選挙では、我が党は落選した人の数ばかりが注目されたが、当選率は99%を超えている。しかも、女性議員が大幅に増え、比率はすでに34%を超えた。地域の基盤を持ち、女性の声を受け止める装置が我が党にはあると自負している。これからも国政のレベルでも女性の活躍の場を広げたい。
第二次安倍政権が発足した時、安倍元総理は、政治が不安定になると、最も不利益を被るのは国民で、国際社会でも日本の存在感が弱くなり、国益を損なうということを話していた。その言葉は今も脳裏に強く刻まれている。
対話
【谷口主査総括】
先の国会の憲法審査会では、緊急事態での議員任期の延長が取り上げられた。緊急事態条項が憲法の最優先課題と受け止めているか、公明党のスタンスやスケジュール感を伺いたい。
山口氏
緊急事態にどう立法府が対応するのかは大きな課題だ。衆議院では、緊急の場合にも機能するような立法府のあり方を追求した。参議院は憲法に緊急集会が規定されているが、実際に使われたことはほとんどない。参議院の緊急集会の意義がどこにあるか、使うとすればどのように使うのかなどについて議論が始まった。様々な意見があるが、議論を深めて、合意形成を図る努力を続けてほしい。
【谷口主査総括】
子育て対策の財源はどうするのか。社会保障制度のあり方を含め、財政の持続可能性についてのプランは。
山口氏
子育て対策の財源については具体的にはこれからだ。歳出削減の努力を行い、当面消費税には求めず、2028年までに恒久財源・安定財源を作り、不足分は国債でつなぐなどの大枠の方針を決めた。年末までにさらに具体化しなければならない。財源は重要だが、むしろ、中身のコンセンサスをつくることが大事だ。最終的には誰かが負担をしなければならないわけだが、幅広く負担のあり方を議論した上で、道筋をつけていく。持続可能な社会を維持するための社会保障のあり方は、全世代型を保った上で、負担を分かち合うのかを議論する。歳出の効率化や無駄な歳出をなくす努力も併せてやっていく。
【増田共同代表】
防衛費の増額については、4分の1程度は増税で対応することになっているが、先送りの議論も出ている。増税のやり方やタイミングはどうするのか。
山口氏
かつて国債に頼って、軍備が際限なく増大し、国家の破綻に結びついた苦い経験がある。最終的に、税という形で負担が一部あるということは、防衛の姿を国民自らの責任で選ぶことにつながっていく。国債で痛みを伴わないやり方から脱却していくことが必要だ。しかし、今のこの状況で、個人の税負担が増え、企業の税負担が大幅に増えるのは避けるべきだ。そうした制度設計を提示しているので、理解を進めて、最終的な形にしたい。
【谷口主査総括】
自公連立の亀裂が取り沙汰されている。
山口氏
自公の連立は実質20年以上にわたっている。冒頭に紹介した安倍元総理の言葉にある心意気や精神がこれからも重要だと思っている。この連立政権を長く保ってきた要因は、意見が違っても合意できる力と知恵があるからだ。岸田総理と私の間では、大局観を見失わないように、安定的な政権基盤を確保することで一致している。
野党第一党となり、国会運営改革を進める
馬場伸幸 日本維新の会代表
冒頭スピーチ
会場には、大学生、大学院生が大勢来ているが、これからの日本の将来は若い皆さんの手に委ねられている。若い皆さんがプレーヤーとして日本の政治を良くして、将来を築き上げていく。そのような人間に成長していただきたい。
日本の歴史を振り返ると、江戸時代に生きていた人たちは、江戸時代が終わってしまうと感じていた人はいなかったと思う。江戸という時代が、ずっと続くと思っていた。しかし、江戸幕府の政治が時代に合わなくなり、外国からの圧力も増え、明治維新に至った。
明治維新は近代国家をつくるため、富国強兵に取り組んだ。あれから77年が経って昭和になり、大東亜戦争に巻き込まれた。日本は敗戦国になり、先人たちはもう一回、日本を素晴らしい国にしようと、不断の努力をし、さらに近代的な国家ができた。
昭和の敗戦から77年目を迎えている。これからの日本をもう一度生まれ変わらせるために構造的な抜本改革を行うことが、今の時代にも求められている。日本維新の会は、超党派で構成される議員連盟「新しい国のかたち(分権2.0)協議会」を運営してきた。
細かな政策ではなく、これからの日本をどうするのかという国家像などについて、議論を積み重ねた。昨年、一定の取りまとめを行い、新しい国のかたちをつくるための法案を作成した。まだ荒削りで国会に提案していないが、「強くて、しなやかな日本をつくる」というスローガンのもとに具体的な政策を掲げていく。
憲法改正をはじめ、大阪都構想という統治機構を変えること、また、税制や社会保障、働き方、規制緩和などをパッケージにまとめた「日本大改革プラン」で、日本維新の会の政策として既に発表させていただいている。この国を再び輝く国家とするためにプランを練り上げていきたい。
残念ながら、小さな集団である日本維新の会は、政権与党にならないと訴えていることは実現しない。そこで、政権をお預かりするための中期経営計画を2年前に策定した。
経営でプランニングしている政党はないが、これからの政党は、経営感覚を持ち、国家をいかに経営していくのかを考えながら運営していかなければならない。ゴールは、政権政党になって日本大改革をやることであり、そのためには3つのステップアップを考えている。
最初のステップは、昨年行われた参議院選挙で改選議席数を倍増させることと、比例代表で野党第一党の議席数を獲得することを掲げ、クリアした。次のステップは、今年4月の統一地方選挙で、全国で仲間を増やし、600人以上の地方議員を誕生させることで、これも達成した。
いよいよ第三ステップだ。次期衆議院選挙で野党第一党の議席を預かる。野党第一党になれば、国会運営を変えて、与党に緊張感を持たせることができる。国民が国政に期待を持つことが出来るような政治にする。アメリカのような二大政党制を実現すれば、時々、政権交代が起こり、政治に緊張感が生まれる。そういう政治をつくり上げていきたい。
対話
【曽根運営幹事】
日本維新の会は「身を切る改革」を大きなキャッチフレーズにしてきた。ただ、議員定数は政治家個人のものではなく、国民のものだという理由で、削減することに批判もある。
馬場氏
日本維新の会は、「身を切る改革」を第一に掲げ、全国で取り組んでいる。約束したことは必ずやるのが維新のスピリッツ。大阪府議会の議席は108だったのを段階的に削減し、今では79議席になった。議員の報酬を3割カットし、今も続けている。
住民の声が届かなくなるのではないか、民主主義が危うくなるのではないか、議員のなり手がなくなるのではないかといった心配の声があるというが、大阪府において、住民の声が届かなくなったという指摘はない。
ITツールの発達により、行政に訴えられる術は余るほどある。行政側も住民の声を直接聞き入れるという姿勢も生まれている。議員の数を減らすことに関して、弊害は全くない。大阪では、維新の議員になりたいという若い人は激増している。
国会議員になって10年。国会議員の数は多すぎると個人的には思うし、半分でも十分だ。衆議院と参議院の役割分担について、国政に関する制度設計も含めて根本から考え直す時期に来ていると感じている。
【曽根運営幹事】
野党第一党を目指しているが、現行の制度では、政権を取ることが目指すべき基本方針だ。政権を取るのはいつ頃、そしてどのような姿なのか。
馬場氏
与党と野党第一党が国会運営のやり方を決めるのが慣例で、野党第一党が本当の意味で戦う野党にならないと、国会の改革は進まない。政権与党と議論をし、政府が出す政策の案に対し、対案を出し、少しでもレベルアップした形で成立させるなど、国民のためになる議会活動を考えている。国政選挙で、どちらの政党が政権政党にふさわしいのかを国民が選択できる状態を実現すれば自ずと投票率は上がる。
そして、国会改革を行い、次の段階で、我々の活動が認められれば、国民が「政権を任せてもいいのではないか」と考える状況が生み出される。次回の総選挙で野党第一党をお預かりし、その次に自民党と肩を並べる程度の議席を得て、そして次に政権政党にステップアップする。選挙のスパンを考えると10年ということで想像できる。
【増田共同代表】
候補者の質を厳密に管理する方法は。
馬場氏
非常に悩ましい問題である。現代社会ではプライバシーに深く入り込んだ調査ができないので、面接で本質を見極めることが大事だ。ただ、演じるのが上手な方も多いので、見抜くのが大変難しい。問題が起こった時に対処する専門チームやハラスメント窓口を設け、リスクヘッジしている。
働く者の政党、政界で役割果たす
玉木雄一郎 国民民主党代表
冒頭スピーチ
先の通常国会が始まる前に、明確に目標を定めた。一つはこの国会を賃上げ国会にすることだ。日本の最大の課題は30年間、実質賃金が上がらなかったことで、このトレンドを変えない限り、何をやっても効果がない。政労使それぞれの立場で、賃金デフレの状態を変えることは最大のミッションだ。我々の政策は、賃上げになることはなんでもやり、賃上げにマイナスになることは全部やめようということだ。
もう一つの目標は、子育てに関連するが、所得制限の撤廃だ。あらゆる制度に所得制限が入っているので、所得が上がったために制限に引っかかって、支援が受けられなくなることが起こる。先の国会では、特に児童手当などの所得制限の撤廃を掲げて取り組んだ。
連合の取り組みや経済界の協力もあって30年ぶりの賃上げが実現した。岸田総理にも政労使会議を呼び掛けて、最優先課題で取り組み、一定の成果があった。今年後半から来年にかけて、持続的な賃上げが可能な環境がつくれるかどうかが重要だ。経済状況をよく見ながら、来年の春闘で、4%前後の名目賃金上昇率を実現するためにやるべきことは全てやりたい。
これからやりたいことは三つある。国を守ることと、産業を興し、民を豊かにすることと、人を育てることだ。秦の始皇帝の時代から、この三つが国家の役割で、一つでも欠けたり弱まったりすると国は滅びる。これらが弱ってきているので、衆議院選挙や参議院選挙で「自分の国は自分で守る」「給料が上がる経済を実現しよう」「人づくりこそ国づくり」というスローガンを掲げた。
賃金を上げるために何が必要か。企業も儲からないと賃金を上げられないので、投資と消費をしっかり後押しすることが大事だ。エネルギー価格がまだ非常に厳しい状況にある。少なくとも、あと半年は、今の支援制度を継続して、そのあと、カーボンニュートラルを踏まえた抜本的な税制改正を年末に行い、来年の4月から実施する。エネルギー対策は段階的に講じていく。
国を守ることに関しては、防衛力の強化だけでなく、食料自給率を安定させ、安価で良質なエネルギーを安定供給し、原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーを進めるなどエネルギーの安定供給を進める。エネルギーの自給率が低い日本では、あらゆる多様なエネルギー源を確保していくことが必要だ。
我が党の方針については、国政選挙ごとに、全国での比例代表の得票数を増やし、あと3回の国政選挙で、安定的に500〜600万票を全国での比例代表で取れるようにしていきたい。それが実現すれば、今の公明党と同じくらいの力になるので、与野党の関係を超えて、必ずキャスティングボードを握れる政治集団になることができる。10〜20年後に必要な政策を掲げつつ、日本の政界の中で役割を果たせる政党になれるように努力していきたい。
対話
【谷口主査総括】
日本維新の会と共同で対案を出すなど、維新との協力が注目を集めた。今後、維新との政策面での協力関係を拡大していくのか。さらに、そのような政策協力を国政選挙での協力関係に発展させる、または選挙前の連立まで進める意志はあるか。政策協力を深めていく場合、連合の理解はどのように得ていくのか。
玉木氏
細川元総理が1993年の選挙制度改革について「この制度は当時から、二大政党的な、政権交代を目指す制度ではなかった」と話していた。確かに、今の制度は、野党第一党によほどの求心力がないと、野党はある程度、分かれていく。制度上、比例代表である程度の議席が取れるので、求心力がなくなった瞬間に、このような状況になるのだということは実感できる。
だから、複数の政党による連立政権が前提で、その組み合わせで権力行使をコントロールし、チェックし、入れ替えていくことを考えるのが現実的だ。ただ、他党がどうなるかは予見できず、日本維新の会と立憲民主党のどちらが野党第一党になるかが分かるまで、我々の振る舞いはわからない。自公が政権を維持するかどうかでも答えは変わる。
生活者、働く者の立場に立って政治を行うことを党の綱領で謳っている。これに合致するものは全部やる。どのような状況になっても働く者の立場に立って、それを訴え続ける。
【増田共同代表】
大平政治の後継を目指しているのか。また、国民民主党は立憲民主党と自民党とでは、どちらに近いのか。
玉木氏
大平元総理を尊敬するのは、郷里の先輩であり、大蔵省(現財務省)の先輩であるからというだけではなく、権力に対して抑制的に向き合うという姿勢だったからだ。自民党か立憲民主党のどちらに近いかという問いには、政策本位と答える。立憲民主党と自民党のどちらの政策が賃上げによりつながるかというと、私はまだ自民党の政策の方が上がると思う。
【谷口主査総括】
「安倍晋三回顧録」では財務省のことを「国が滅びても、財政規律が保たれていると満足」など厳しく批判しているが、財務省OBとして言いたいことは。
玉木氏
財務省設置法に財務省の任務として「健全な財政の確保」とあり、法律の中で仕事をするのが役人だ。一方、それを超えて判断し、選挙を経て、国民に判断いただく政治家としては、もう少し幅の広い判断ができる。エーザイ元CFOの柳良平氏は、人への投資が株価にどうプラスに作用するかを分析し、高い評価を得たが、この考え方は財政政策にも応用できる。1,000兆円を超える長期債務をいきなりゼロにすることはできず、高度なライアビリティ・マネジメントが求められる。それを政治主導でやってはどうか。
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