有権者の皆さんへ
有権者の皆さんへ~私たちがいま、考えるべきこと
私たちは平成の30年余りの間に、阪神・淡路と東日本の二度の大震災を経験しました。そして令和になってからも新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われています。繰り返し訪れる巨大な災害によって、私たちはあらためて自然の脅威を痛感しました。そして同時に、日本の政治や経済・社会システムがけっして盤石ではないこと、むしろ様々な矛盾や困難にさらされ、苦悶していることを思い知らされました。私たちの拠って立つ日本社会は、思っている以上に脆かったのです。
災害のたびに、私たちはこれから日本社会が根底から変わっていくと期待しました。変わらなければならないと考えました。しかしながら、はたして日本社会は変わったのでしょうか。なるほど、災害のたびに新たな制度や仕組みが導入され、危機への対応能力は確実に進化しているはずです。にもかかわらず、私たちはいまだに日本が真に強靭な社会になったという実感を持てずにいます。むしろ「変わらなければ」という掛け声に対して、悪い意味で慣れてしまった印象さえあります。
私たちを脅かすのは自然災害だけではありません。はたして日本の政治や行政は、グローバル化の進む世界の諸課題に対応するために十分な能力を持っているのでしょうか。少子高齢化に歯止めがかけられない状況において、経済や社会保障の仕組みはこれからも持続可能なのでしょうか。そしてデジタル化やカーボンニュートラルの課題と直面するなか、日本の国土をどのように発展させていくべきでしょうか。私たちはこれらの諸問題について、世代や性別、職業や地域などの違いを超えて、これまで十分に議論を交わしてきたとは言えません。
より良い民主主義を可能にするための国や自治体の仕組み、健康で豊かな暮らしのための長期的な展望、一人ひとりの自由で多様な生き方、働き方に支えられた新たな日本社会を今こそ構想し、実現すべきなのです。
現在の私たちにもっとも欠けているのは、自分たちの社会を自分たちの力で変えていけるという自信なのかもしれません。あるいは、その道筋がどれほど厳しいとしても、この社会をより良いものにしていこうとする強い意志を失ってしまったのかもしれません。それは民主主義の危機なのです。民主主義の脅威は外から来るとは限りません。自分が何をしても無駄だ、誰かが何とかしてくれるはずだと思っているならば、それは民主主義の敗北を意味するのです。
このような民主主義の危機に立ち向かうために、令和臨調が発足しました。令和臨調とは、長期的な展望に立った上で、日本社会にいかなる改革が必要かを議論するために、党派を超えて各界から集まった有志のメンバーによる民間組織です。多くの人が希望を持って未来を展望できる社会に向けて、国民的な合意形成の一助となることを目指しています。
私たちは未来の日本社会、そして人類社会に対して責任を負っています。今こそ、共に語り、考え、そして行動しなければならない時です。私たちに残された時間は決して多くありません。統治構造、財政・社会保障、国土構想を中心に、令和臨調は不退転の覚悟で検討を進めます。多くの皆さんと対話し、一緒に考えていくことを願っています。
2022年2月28日