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「参議院選挙に向けて私たちが問いたいこと―民主主義のガバナンス改革と持続可能性を考えよう―」ならびに報告書「令和の政治改革大綱に向けて」に関する記者会見開催報告

令和国民会議(令和臨調)は6月18日、記者会見を開き、参議院選挙に向けて、各党で議論すべき政治改革の論点をとりまとめ、「参議院選挙に向けて私たちが問いたいこと―民主主義のガバナンス改革と持続可能性を考えよう―」として公表しました。これまで議論してきた政治改革・統治構造改革の主な論点のうち、参議院選挙に向けて特に強調したい項目を挙げました。
また、民主政治のガバナンス確立に向けた課題と、その短期的対応および中長期の改革の方向を示した「『令和の政治改革大綱に向けて』―日本の民主政治のガバナンスを再確立する―」と題する報告書をあわせて公表しました。

「参議院選挙に向けて私たちが問いたいこと」
報告書「令和の政治改革大綱に向けて」
記者会見の様子

政治改革の論点を提示
参議院選挙へ向け各党に議論促す

記者会見には、令和臨調「統治構造」部会共同座長の新浪剛史氏(サントリーホールディングス代表取締役会長)と、同部会主査兼主査総括の谷口将紀氏(東京大学教授)、同部会主査の宍戸常寿氏(東京大学教授)が出席しました。

まず、新浪氏は「日本では、昨年の総選挙により、30年ぶりの少数与党内閣となり、政権運営の厳しさが増し政治的な不安定さが増す一方、これを日本の民主主義をバージョンアップするチャンスと捉え、国会改革をはじめ旧来の政治を変えようとする動きも生まれている。私たちはその試みを応援し、日本政治を変えるさらに大きな流れに育てていく必要がある」と述べました。

参議院を先進的民主政治の府に

政党のガバナンスについては、「政党が作成する選挙公約の位置づけや評価プロセスの仕組みを含めて、政党のガバナンス改革のあり方を早急に検討すべきだ」と指摘しました。

国会の改革と運営については、「日本の政治はグローバルな視点が欠如しており、他国との接点をどのように維持して生き抜いていくかという視座が必要だ」と指摘。総理や閣僚が海外に出ていって人間関係を構築できるように、通年国会など、国会運営を効率的で合理性のある形に変える必要があるとしています。

二院制のあり方・役割については、「二院制は必要だが、参議院を衆議院とは違う位置づけにして、先進的民主政治の府とするべきだ」としたうえで、「長期的視点・熟議」「行政監視・監査」「地方」「ジェンダー」などの観点から新しい議会を構想し、独自性を発揮すべきとの考えを示しました。

衆参被選挙権を18歳以上に

国民・若者世代の政治参画に関しては、「日本社会や民主主義の持続可能性を考える上で、将来の日本社会を担う若者世代の声を政治に届けることが欠かせない」とし、まずは、衆議院議員25歳以上、参議院議員30歳以上に留め置かれている被選挙権年齢を、ともに成年年齢である18歳以上に引き下げることを求めました。

以上を踏まえたうえで、自民党が1989年に出した「政治改革大綱」のように、政党や政治家自らが「令和の政治改革大綱」を作ることで、日本の民主政治のガバナンスを再確立していくことが重要であると指摘しています。

ガバナンス立て直しは急務

続いて、谷口氏が、政党、国会、二院制、官僚制、民主政治の参画基盤の拡大を対象に、主要な論点を取りまとめた報告書について、その要点を説明しました。

谷口氏は「各政党の公約発表を拝聴するにつけて、このままで大丈夫なのかと思わざるを得ない。民主政治のガバナンスの立て直しが急務である」と指摘しました。

そして、民主政治のガバナンスの立て直しとは、「より多様な人々が政治に参画できるようにして国民の代表性を先進民主国としてふさわしい水準に高めるとともに、誤った政治や効果のない政策を見直すため、監督・監視機能の強化と、透明性およびアカウンタビリティの確保を図りつつ、効率的かつ理性的に課題解決に導けるように古い仕組みを作り替えることだ」と説明しました。

中選挙区制に戻る道はない

平成の政治改革においては候補者本位の政治や選挙を排して、政党、政策本位の政治を目指すという一貫したコンセプトの下で、政権交代可能な緊張感のある政治システムを目指しました。衆議院の中選挙区制を廃止する選挙制度改革と、政治家に対する企業団体献金を厳しく規制するなどの政治資金制度改革が行われました。

この結果、有権者の意識の上では政党本位の政治は相当程度実現されましたが、肝心要の政党のガバナンス、国会のあり方が国民の期待に全く応えられていないため、今回の提言で強く訴えています。

谷口氏は「一部の政治家からは衆議院に中選挙区制を復活したいという声が聞こえるが、これは『金がかかる』『政治腐敗の温床となる』『候補者本位の政治に後戻りする』乱暴な議論だ。この30年間で投票価値の平等が厳しく求められるようになり、この変化を踏まえると、今日において、もはや中選挙区制に戻る道はない」とクギを刺しました。

統治構造改革に特効薬なし

また、宍戸氏は「民主主義のガバナンスは多層的であり、国民、政党・政治家、国会、官僚のそれぞれが自律するとともに、それぞれが監視・牽制するメカニズムを考えている。統治構造改革の問題に、特効薬はない。それぞれが担い手なのだという自覚を持って、全体を見ながら個について手当てするなど、慎重かつ大胆に進めていく必要がある」と話しました。