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提言「より良い未来を築く財政運営の実現に向けて」記者会見 開催報告

令和国民会議(令和臨調)は10月6日、提言「より良い未来を築く財政運営の実現に向けて―長期財政推計委員会と政策プログラム評価委員会の創設―」を発表し、「長期財政推計委員会(仮称)」の国会への設置と、「政策プログラム評価委員会(仮称)」の行政府への設置を提案しました。2つの委員会を有効に機能させるために、独立性を確保し、徹底した情報公開と国民との対話により、信頼性を高める重要性を訴えました。

関連資料 記者会見の様子

長期財政推計委員会と政策プログラム評価委員会の創設を

都内で開かれた記者会見には、「財政・社会保障」部会の共同座長を務める平野信行 三菱UFJ銀行特別顧問、翁百合 ㈱日本総合研究所理事長と、同部会主査を務める小林慶一郎 慶應義塾大学教授、伊藤由希子 津田塾大学教授が出席しました。

まず、平野共同座長が、提言を作成した問題意識について、「日本社会に広がっている将来に対する漠然たる不安が、経済社会の発展を阻害してきたし、未来を切り拓く活力をそいでいた。これを放置していたら、これからも停滞から本格的に脱却できない」と述べました。

一方で、この春、30年ぶりの高水準での賃上げが実現したほか、9月の日銀短観で2023年度の設備投資計画が全規模・全産業で前年度比13%増となるなど、日本経済に明るい兆しが見え始めていることにも触れました。

平野共同座長は「まず、この兆しを確かなものにしていくという足元の対応と同時に、漠然とした将来不安の解消のためにも、将来を展望した長期的視点に立った政策あるいは財政運営が必要だ」と指摘し、「長期財政推計委員会」と「政策プログラム評価委員会」創設の提案と、その重要性を訴えました。

今回の提言における「長期財政推計委員会」は、長期的な視点に立った政策・財政運営を行うため、長期的な財政状況の予測を客観的・中立的に行う組織です。経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国の約8割の国で、政府から独立した長期予測機能等を担う組織が設置され、各国経済の持続性と信頼性を確保する上で一定の役割を果たしており、日本にも同様の組織の設置が必要とされていると指摘しました。

日本でも、内閣府が「中長期の経済財政に関する試算」で、10年間の経済・財政予測を公表しています。しかし、経済見通しの前提条件とすべき経済成長率は政府にとっては政策目標でもあるため、その見通しが結果として楽観的となる傾向も否定できません。

他の主要先進国との比較において、日本は財政に関する情報開示の程度が高いとは言えず、長期財政推計委員会はこの点の改善を目指しています。具体的には、財政収支、国の債務残高及び国民の税・保険料の負担等について、複数の世代にわたる長期期間(たとえば今後30年間程度)で予測し、将来世代の負担率や歳出余力などについて、持続可能性の観点から評価するなどの機能を持たせます。

さらに、令和臨調は、成長戦略や社会保障制度などの政策が当初の期待通りの効果があったかどうかを事後的に総合評価する「政策プログラム評価委員会」を行政府に設置するよう提案しました。この委員会には独立性を持たせる必要があることから、国家行政組織法第3条に基づく、いわゆる「三条委員会」(外局)としての設置を求めています。

この背景には、日本では、多額の予算を使う重要な政策分野、とりわけ子育て支援、成長戦略、労働政策、感染症対策などの分野で、日本が置かれた状況の変化に適切に対応した政策が実施されているかの客観的な検証が十分と言えない現状があります。

さらに、社会保障や教育など、法律に基づいて政府が行っている主要業務においては、社会・経済情勢の変化や財政へのインパクトなどを検証することがないまま、法律等に規定された義務として予算の執行が続けられているケースがしばしば見受けられます。

このような国民生活や経済・社会に重大な影響を与える政策分野における諸政策全体について、政策プログラム評価を行う機能を政府内に設けることで、その評価を活かし、これからの政策を抜本的に見直すことができるという効果が期待されます。

具体的には、国民生活・経済・社会に重大な影響のある政策分野において対象とすべき政策プログラムを選定し、妥当性や効果等について評価を実施します。政策プログラムについて、当初期待した政策目標(社会的課題の解決など)は達成できたか、客観情勢に大きな変化はないか、現時点でも最善の内容となっているか、必要な場合には当該政策目標自体の妥当性も含めて、事後的に長期的な視野に立って客観的な検証を行います。

評価の結果、必要と判断された場合には、現行の政策プログラムを構成する法制度や予算項目の廃止・統合なども含む抜本的な是正を政府に勧告します。評価対象となる政策プログラムは、一定期間後に徹底したフォローアップを実施した上で、選定し直すこととしています。

令和臨調は今後、両委員会を設置し、機能を果たせるための組織や運営の実現に向けて、政治や行政などとの連携を模索する方針です。

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